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ヘリコプターマネー 長池國裕さん(みやぎん経済研究所常務理事)

2016/08/05
長池國裕さん(みやぎん経済研究所常務理事)「ヘリコプターマネー」

まずはアベノミクス検証を


ながいけ・くにひろ 宮崎市出身。1978(昭和53)年早稲田大卒、宮崎銀行入行。証券国際部、経営企画部主任調査役、東京支店長などを経て2011年7月から現職

ながいけ・くにひろ 宮崎市出身。1978(昭和53)年早稲田大卒、宮崎銀行入行。証券国際部、経営企画部主任調査役、東京支店長などを経て2011年7月から現職

 参院選も大方の予想通りの結果に終わり、今後の経済対策プランに関する予測、分析などに目を向けてみようと思った矢先に、「ヘリコプターマネー(ヘリマネー)」政策の導入を巡る各種メディアでの論評が急増してきた。

 ヘリマネーとは、ヘリコプターで空から現金をばらまくように、中央銀行・政府が大量の貨幣を市中に供給する政策を指し、中央銀行による国債の引き受けや政府紙幣の発行がこれに当たるとされる。要は、市中銀行経由では家計や企業に流れにくい巨額の日銀資金を、財政を通じて投資に向かわせ、脱デフレ・経済再生を目指すことである。

 これに対する評価、問題点については後述するものとして、まずは、なぜ、参院選を終えた現政権が「アベノミクスが信認された」と自己評価し、あらためてギアアップしていくとアナウンスしている中で、新たな金融政策とも言えるヘリマネーの“事前すり込み”を図るのか。それは、アベノミクスの金看板である「異次元の金融緩和」政策に限界が見え始めているからではないだろうか。

 さらに、ヘリマネーについては「財政が拡張方向にあり、追加的な赤字が国債増発でファイナンスされれば、それはヘリコプターマネーである」という広義の解釈もあり、アベノミクスは初期段階から「ヘリマネーに手を染めていた」という見方もある。つまり、わが国は既に「事実上の財政ファイナンス状態にある」ということであり、こうした指摘は多く聞かれる。

 財政ファイナンスとは、厳しい財政状況にある国の政府が国債を発行して中央銀行に引き受けさせ、紙幣の増刷で財政赤字を穴埋めする状況を指す。これは、将来的には財政破綻への懸念から国債相場の暴落につながるほか、通貨の信認低下で為替相場が下落し、輸入物価の急騰などを通じた高インフレが国民生活に深刻な打撃をもたらす恐れがあるとされる。

 ヘリマネーを巡る動きを見ると、まずは本田悦朗氏(現スイス大使、前内閣官房参与)が「今がヘリマネーに踏み切るチャンスである」と、安倍晋三首相に進言。米エール大の浜田宏一名誉教授も「一度限りという条件なら、ヘリマネーを検討してもよい」と発言している。この2人はもともと熱心な「リフレ派」の経済学者であり、安倍政権発足以前からデフレ脱却のためにはリフレーション政策(※リフレ政策)が必要であると主張してきた。7月12日には米連邦準備制度理事会(FRB)の前議長、ベン・バーナンキ氏が来日。ヘリマネー論者とも言われる同氏の来日で本論に対する関心がさらに高まってきた。

 また、本田、浜田両氏はアベノミクスのスタート時点で、この経済政策の核としてトリクルダウン理論も主張、展開していた。「大企業や富裕層が潤えば、中小企業や低所得者層にも次第に富がしたたり落ち、経済全体が活性化する」という理論だ。

 しかし、アベノミクスが始まって既に3年半が経過した今、リフレーションもトリクルダウンも誰も口にしなくなっている。

 金融経済政策の「効果の検証」において多くの疑問が残されたまま、また新たに、私たち一般市民にとって理解しにくい「ヘリコプターマネー」という言葉が登場した。これでは、政策への信頼性を逆に揺るがしかねない。そんな懸念を持ってしまう。それとも、安倍首相が消費税の増税延期を決定した記者会見で使った「新しい判断」に基づけば、懸念は解消されるということなのであろうか。さらなる精緻な検証が必要である。


 ※リフレ政策とは、市場に出回るお金の量を増やす金融緩和によって意図的にインフレを起こし、一定の物価上昇目標を達成し、デフレからの脱却を目指す政策。

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