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2019年11月12日(火)
アナライズ

グローバル人材の育成 高橋洋さん(ソラシドエア社長)

2016/07/29
髙橋洋さん(ソラシドエア社長)「グローバル人材の育成」

グローバルな若者像について


たかはし・ひろし 東京大法学部卒。1977年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。プロジェクトファイナンス部長、人事部長、取締役常務執行役員を経て2011年から現職。岐阜県出身

たかはし・ひろし 東京大法学部卒。1977年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。プロジェクトファイナンス部長、人事部長、取締役常務執行役員を経て2011年から現職。岐阜県出身

 昨年から宮崎市の宮崎大宮高で「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」事業の運営指導委員会をやらせてもらっている。国際的リーダーを育てる文部科学省の取り組みで、県内では五ケ瀬中等教育学校に続いて2校目。伝統校の宮崎大宮高がこのようなチャレンジングなSGH事業に参加するのは素晴らしいことだ。

 委員会メンバーを引き受けるに当たって、そもそも「グローバル人材」の定義について考えてみた。私は委員会メンバーに選ばれたが、もともと「超」が付くほどのドメスティック(国内向き)な人間である。大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行し、ドイツ・フランクフルトに3年間駐在した経験を持つが、英語が苦手なためドイツ語に逃げたというのが正直なところだ。英語が堪能だったら別の人生を歩んでいたと思う。今も英語を勉強していなかったことへの反省と後悔がある。

 そんな「英語ダメ人間」だったことへの反省が委員会メンバーを引き受けた理由の一つ。外国語で長年苦労した人間として、これからの若者には私の轍(てつ)を踏んでほしくない。そして、ドイツでの経験から、グローバルビジネスについて少しは語ることができる。これからの若者たちには、「グローバルな世界で勝負してもらうために、こうなってほしい」という思いがある。もう一つの理由は、5年前にソラシドエアの社長に就任して以来、自分のような人間を大事にしてくれた宮崎への恩返しをしたいという気持ちもある。

 グローバル社会の基本構造は、異なる文化や価値観を持った多種多様な人間同士の「交流」と「戦い」の場だ。国内のローカルルールはまったく通用しないし、押し付けることもできない。政治、経済のシステムや宗教も異なるさまざまな相手と交渉し、何とか妥協点を見いださなければいけない。

 フランクフルト駐在中の1994年、ロシアで旧東ドイツ国営企業の民営化をテーマに講演する機会があった。ロシア人は論理的な議論にたけていて、講演中、徹底してこちらの矛盾を突いてきた。何度も厳しい質問を受けるうちに「本当は、相手の言っていることの方が正しいのではないか」と自信が薄れていくことがあった。当時のロシアは国家統制経済から市場経済への転換が急激に進む時期だった。講師の私に激論を挑む者が講演中に多かったのも、元共産主義エリート達のプライドといった心情的な要素もあったのかもしれない。

 あのような体験はあまりしたくないと思うが、心底自分に自信を持っていないと相手を説得できないことが分かった貴重な場でもあった。同時に相手を理解し、妥協できる人間的な幅がないとまともな交渉もできないことも分かった。

 私なりにこうした実践してきた中で、グローバル社会を生き抜く人材に必要な資質を3つ挙げたい。(1)確固とした自分の思想や価値観を持っていること(2)自分と異なる思想や価値観を理解できる幅を持っていること(3)相手と十分なコミュニケーションできる言語能力を持っていること-。

 では、若いうちに何をたたき込むか。まずは世界が多くの異質な文化で構成されていることを認識させなければいけない。同時に宮崎のように居心地の良い環境がこの世界では例外で、ほとんどないということを知らせる必要がある。そして、若者たちに明確な目標と野心を抱かせる。野心を抱いて初めて人間は必死になる。また、相手に自分の価値を認めさせるためには、自分の基盤となる日本の文化や歴史、伝統も学ばなければならない。

 フランクフルトで交流のあったドイツの銀行マンたちは自国の文化や歴史、音楽などについて夜を徹して語ることができるほど造詣が深い人が多く、そうした人物がグローバルな社会では尊敬されていた。さらに、通訳を介さず、自らの言葉で語ることが大事だ。語学力、特に表現力は徹底的に磨かなければならない。

 周囲を全て“宮崎人”に囲まれて学ぶだけではこうした覚悟が備わらない。異文化代表のような人物に取り囲まれてカルチャーショックを受けながら学ぶ方がはるかに効果的だ。目標となるアイドル的な人物を見せることも一案。また、与えられた至れり尽くせりの教育ではなく、生徒が自分のミッションとして認識して、自分の頭で考えられるようになる仕組みが必要だ。

 宮崎には明治の日本外交をリードした外交官・小村寿太郎侯をはじめ、安井息軒、高木兼寛、石井十次、岩切章太郎など若者たちの目標となる個性的な先覚がいる。また九州人は江戸時代初めで、倭寇(わこう)として海を渡りアジア各地を荒らし回るなど極めて進取の気質を持っていた。21世紀の時代を担う若者たちには、この機会を生かして、どんどん自分の将来を招いていってほしい。地域を挙げてこの「SGH事業」を応援し、宮崎の人材面でのグローバル化を推進していただきたい。


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