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異業種コラボレーション事業の副次的効果 菊池克賴さん(宮交ホールディングス社長)

2016/04/22
宮交ホールディングス社長 菊池克頼さん「異業種コラボレーション事業の副次的効果」

「やわらかあたま」育む


きくち・かつより 1974(昭和49)年、全日本空輸入社。上席執行役員東京支店長、スカイビルサービス社長などを経て2012年6月から現職。宮崎市観光協会会長も務める。西都市出身。

きくち・かつより 1974(昭和49)年、全日本空輸入社。上席執行役員東京支店長、スカイビルサービス社長などを経て2012年6月から現職。宮崎市観光協会会長も務める。西都市出身。

 宮崎交通の一般路線バスの364系統(路線)のうち約75パーセントが赤字であり、運行の収支面での基盤は残念ながら脆弱(ぜいじゃく)と言わざるを得ない。この難題についてさまざまな形で対応していかなければならないが、その一つとして昨年10月からヤマト運輸と連携し、西都-西米良の中山間地を運行する路線バスでお客と共に宅急便を運ぶビジネスを始めた。

 異業種間のコラボレーションというと、情報技術やロボット技術などの最先端技術を異分野において融合させ、製品やサービスをより高付加価値化させる華々しい事例が思い浮かぶかもしれない。そんな派手さはないが、両者はビジネスの本質を追究し、共同事業により互いの抱える課題を解決していこうとする点では同じだろう。

 バスで宅急便を運ぶ場合、実務的にはさまざまなハードルがある。バスと宅急便の配送車との貨物受け渡しを「どこで」「どのように」実施するか。バスのお客の安全性や利便性を確保した上で、宅急便サービスに適切なダイヤや作業手順をどう設定するか。宅急便の量を想定したバスの車種選定や車内改造をどのような仕様にするか。課題は尽きない。

 試みを通してさまざまな発見もあった。一般的に宅急便はベースとなる支店にまとめて運ばれ、さらに地域を管轄するセンターに引き渡される。そこから中山間地域との間で1日2往復の集配を行うが、その1往復でもバスで請け負えば、集荷時間の延長や高齢者の見守りなどの付帯サービスも容易になる。

 またバスのお客は朝の通勤、通学、通院などで都市中心部へ出て来られ、夕方郊外へ帰宅できる。夕方に郊外へ向かった便の帰りは回送が発生するが、宅急便はまだ遅い時間に地域での集配需要があり、ここにもサービス向上の余地は残る。

 これらの試みで一般路線バス事業の収支を整え、その事業性を大きく改善できるまでには至っていないが、異業種との共同事業を通じて得た副次的な効果がある。

 一つは、共同事業の実現に向けたさまざまな課題解決と新たな発見から「やわらかアタマ」を作ることができる。これまでの自社内での話し合いやビジネスの延長では、創造性を促すことはできないし、ややもすると目の前の課題に対して思考停止に陥ってしまう。互いの制約を乗り越えて共同事業を実現させようとする生みの苦しみにより、既存の視点にとらわれず、さまざまな角度から物事を問い続ける癖が付く。

 二つ目は、課題が大きく複雑になるほど一企業で解決することは困難だが、逆に多くの力を合わせれば一歩踏み出せることに気付く。特に中山間地域の過疎化、少子高齢化、生産年齢人口の減少と急速な進展という課題を抱える本県では、後背地需要がまだ潤沢な大都市と違い、交通や運送事業者が抱える課題は大きい。共同事業で「競争」だけでなく「共創」によるサービス向上と事業の継続という視点も養える。

 今回の取り組みの端緒は中山間地域における路線バス活用策の模索だが、共同事業を通した人材育成という大切な副次的効果を生んだ。自治体の首長ら良き理解者の存在、全国からの問い合わせや視察対応により多くの人的ネットワークや勇気も得た。

 多少大げさかもしれないが、一見無関係だと思う分野やアイデアを結び付け、さまざまな業種や異分野の人との交流を積極的に求める「イノベーション人材」が、本県で一人でも多く育ってほしいと願っている。

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