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2019年10月14日(月)
アナライズ

マイナス金利の影響 久島満洋さん(山田FAS取締役)

2016/04/08
山田FAS取締役 久島満洋さん「マイナス金利の影響」

負の側面にも注意を


きゅうしま・みつひろ 1974(昭和49)年1月、宮崎市生まれ。宮崎西高から一橋大卒。宮崎銀行を経て2007年に山田FAS取締役就任。公認会計士

きゅうしま・みつひろ 1974(昭和49)年1月、宮崎市生まれ。宮崎西高から一橋大卒。宮崎銀行を経て2007年に山田FAS取締役就任。公認会計士

 1月29日に発表された日銀のマイナス金利導入。誰も予想していなかっただけに、当日の日経平均株価は発表後から乱高下を繰り返し、最終的には476円高の1万7518円となった。それほど市場にもインパクトを与える重大ニュースだった。

 マイナス金利により今後はもっと金利が安くなり、企業や個人はこれまで以上にお金が借りやすくなる。実際、大手銀行を中心に住宅ローン金利はすぐに下落した。だが、マイナス金利の最終目標は、景気を刺激し、デフレ脱却を果たすことだ。果たしてマイナス金利の導入は金利のさらなる低下が起きるだけで、本当に景気は刺激されるのだろうか。

 考えなければならないのは、マイナス金利の負の側面。すなわち、借り手のモラルハザード(倫理観の欠如)を生み出すことと、金融機関の体力を奪い金融機能を弱体化させることだ。

 マイナス金利下では、民間に適用される金利も格段に低くなる。これだと、お金を借りたとしても金利はほとんどなく、金利の怖さを認識できない。ある上場会社の社長は「かつては金利上昇のリスクを考えてお金を借りるかどうか考えていた。しかし、今の若い社員は金利が上がることを考えていない。危険な状況だ」と話していた。これこそ借り手のモラルハザードだ。金利はいつか必ず上がる。だが安易な借り入れをすれば返済難に陥る。モラルハザードは不良債権の種となり、非常に危険だ。

 次の問題が金融機能の弱体化。金融機関にとっての金利とは、本質的には貸出先から貸金を回収できない場合のリスクをカバーするための財源だ。マイナス金利ではカバー財源がないので、金融機関はリスクを取れなくなる。結果として本当にお金が必要な企業の創業期や大規模投資に対して尻込みして、担保を確実に取れる住宅ローンや大企業に対する安全な貸し出しだけを推進することになる。

 金融庁は、金融機関が目利き力をつけて中小企業向けの貸し出しを増やせという方針。いわゆる事業性評価を重視した融資だ。だが、現状の金利では金融機関はリスクを取れる余地が少ない。このような状況ではちょっとした融資の失敗が経営を大きく揺るがすことになる。金融機関の経営不安が経済に与える影響はとてつもなく大きい。目利き力が上がったとしても簡単に貸し出しを増やせるとはとても思えない。

 どうすれば景気をよくできるのか。結論は財政出動だ。日本の貿易依存度は15パーセント程度。国内総生産(GDP)に占める内需の割合はとても大きい。政府主導でもいいので、力強い消費があれば、これを軸として民間の投資意欲が生じ、そこで初めて金融機関も安心して貸し出しができるのではないか。そのときこそマイナス金利が本来の効果を発揮するだろう。

 安倍晋三首相は「衆参同日選」を検討しているというが、どのような景気刺激策が出てくるのかを注視したい。それが劇薬であるマイナス金利の成否を決めるだろう。

 最後にマイナス金利に関連したアドバイス。現状で恩恵を受けられるのは住宅ローンの残高がそれなりにある人。借り換えを検討したほうがいい。また、事業承継における経営陣による自社買収(MBO)や合併・買収(M&A)。安定的なキャッシュを生み出す事業を、借り入れを利用して取得することもメリットが大きい。

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