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障害者差別解消法への対応 辻利則さん(宮崎公立大学人文学部教授)

2016/03/18
辻利則さん(宮崎公立大学人文学部教授)「障害者差別解消法への対応」

「当事者」を意識する


つじ・としのり 1993年、宮崎公立大学助手。講師、准教授を経て2008年から同大学教授。1999年宮崎大学大学院工学研究科博士後期課程修了。工学博士。専門は情報科学と災害情報。えびの市出身。

つじ・としのり 1993年、宮崎公立大学助手。講師、准教授を経て2008年から同大学教授。1999年宮崎大学大学院工学研究科博士後期課程修了。工学博士。専門は情報科学と災害情報。えびの市出身。

 障害の有無によって分け隔てられることのない社会を目指す障害者差別解消法が、4月に施行される。企業や学校では障害を理由に拒否や制限といった不当な扱いを禁じ、合理的配慮をするよう求められている。身体障害者だけでなく、一見では分かりづらい、例えば精神障害者などへの対応に、企業や学校現場の中には戸惑いを持つところもあると聞く。

 どう対応すればいいのか。まず思いつくのが、いわゆる福祉の「専門家」への相談だ。彼らなら障害者と企業の両方の立場で、合理的配慮の線引きについても妥当なアドバイスをくれるだろう。だが「専門家」の意見は、必ずしも障害者のニーズにマッチしていないことがある。それは彼らが「当事者」ではないからだ。

 県ボランティア協会長をしていることもあり、障害者と一緒に旅行したり、アート制作を通じて子供たちが障害者を理解するためのふれあい活動を行ったりしている。先日は大学生や地域の高齢者、そして障害者も加わり交流会を開催。生き生きと劇や書道を披露する障害者から「生きる力」や「可能性」が伝わってきた。

 世の中には多分に「障害者は何もできない」という先入観があり、周りがさまざまな支援を提供している。しかし、じかに接すると考えをあらためさせられる。これは「今の若者は」「高齢者は」といった思い込みと同じで、いくら相手の立場に立って考えても、想像できない部分が多々あるからだ。

 以前に小欄でも述べたが、高齢化社会に向けた新しいビジネスの種は障害者が持っている。視覚や聴覚、そして精神など障害のある彼らは健常者が知らない多くの苦労を実際に体験している。企業は新法への対応を検討するだけでなく、彼ら「当事者」をうまく生かせば、説得力のあるアイデアを生み出せるだろう。

 このように「当事者」、すなわち人間を中心に発想する方法をビジネスの分野ではデザイン・シンキングというそうだ。本県のフードビジネス振興であれば、海外でのPRや営業だけでなく、現地の料理人やバイヤーを本県に招き、当事者と一緒に考えるということだろう。外国人が好む味を思い込みで作っていないか。もしかすると日本の、宮崎の味を変えないことが答えかもしれない。

 新法への対応としての障害者理解、そのことはビジネスでも通用する新しい発想法である。どの分野、どの立場からでも「当事者」に学ぶ意識を忘れてはいけない。

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