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マイナス金利の導入 長池國裕さん(みやぎん経済研究所常務理事)

2016/03/11
長池國裕さん(みやぎん経済研究所常務理事)「マイナス金利の導入」

注視すべきは金融機関への影響


ながいけ・くにひろ 宮崎市出身。1978(昭和53)年早稲田大卒、宮崎銀行入行。証券国際部、経営企画部主任調査役、東京支店長などを経て2011年7月から現職

ながいけ・くにひろ 宮崎市出身。1978(昭和53)年早稲田大卒、宮崎銀行入行。証券国際部、経営企画部主任調査役、東京支店長などを経て2011年7月から現職

 各種メディアが「マイナス金利」を大きく報じ続ける中、同じテーマに触れることは本意ではない。しかし、導入の影響が企業経営や個人の生活に直ちに及ぶかのような報道が目立っており、冷静に分析することも必要ではないかと考える。

 日銀がマイナス金利の導入を決定した1月29日、報道各社から取材を受けた。その際、私なりに論点を整理した主なポイントは次の通りである。

 マイナス金利の本質は「強力な金融緩和(景気・為替対策)」である。現在の金融経済市場の不安要因は(1)中国経済の減速と新興国経済の不安定化(2)米国の利上げ=緩和政策の終了(3)原油価格の低下-という三つであり、株式市場の乱高下に見られるように振幅の大きな展開になっている。

 こうした状況から政府は、企業が新たな投資に対して慎重になることを回避したいという政策的な動機を持っていた。また、2パーセントの物価上昇を至上命題とする日銀としても、金融緩和パッケージの最終手段として未踏の領域に足を踏み入れるタイミングにあった。これらを背景に導入されたマイナス金利には、当然ながら「副作用」もあり、将来的に「金融緩和の出口」を検討していく際には、高いハードルにもなり得る。

 マイナス金利導入による具体的な影響は、直接的には銀行業に及んでくる。しかし、各金融機関が日銀に保有する、今回の政策適用の対象となる当座預金は、各行がそれぞれに設定しているターゲットバランス(一定残高)を目安に残高管理されており、その水準を残高が大幅に超過してマイナス金利を負担するとは考えにくい。従って、直接的な影響は限定的だと考える。

 日銀に預けられている資金が市中に流れることを意図したマイナス金利だが、実体経済への波及はなかなかに困難である。アベノミクスの1本目の矢であった大胆な金融緩和は、低金利の継続という部分では一定の効果があったものの、「マネーの好循環」という部分では及第点をつけるのが難しく、マイナス金利の波及効果も未知数と評価せざるを得ない。既に金融政策の限界(=※長期停滞)が生じている可能性もある。 

 以上が総括的な政策評価だが、メディアの切り口は預金や住宅ローンの金利引き下げをはじめ、身近なテーマに偏りがちである。読者・視聴者にとっての分かりやすさを意識した点は理解できるが、経済全体への影響という点では決して大きなものではない。それを軽視するものではないが、例えば住宅ローンは20年、30年といった長期間にわたる累積的な効果を現時点で予測したものにすぎず、これがあたかも借り手にとって即効性のある恩恵であるように報じられているのは疑問だ。

 今、最も注視すべきことは、金融機関への影響である。県内では、日銀当座預金口座を保有する地域金融機関は限られているので、直接的なマイナス金利の影響を受けることはほとんどないといえる。しかし、今後、市場金利の変化により、各地域金融機関の預貸金がメガバンクに流れるなどして全体的に低下していく動きになれば、収益への下方圧力が掛かり、地域経済をけん引していくべき地域金融機関の力をそぐことにもなりかねない。2月中旬から発生している短期市場の取引の「縮小化」傾向など、さまざまな課題が顕在化しており、今後とも検証・分析していく必要がある。


 ※長期停滞
 2013年11月の国際通貨基金(IMF)会議で米国のサマーズ元財務長官が行った発言であり、「先進国の長期停滞(Secular  Stagnation)論」として注目された。その概要は、先進国経済は過剰な設備・貯蓄・労働力を抱えており、これらを十分に活用するような投資機会が不足しているという認識から、先進国経済がリーマンショック前の状態に戻ることは容易ではないとしている。過去、ケインズも「資本主義が発展するにつれて欲望が飽和し、良質の投資機会が枯渇して収益率が低下し、長期停滞に至る」と主張している。

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