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2019年10月14日(月)
アナライズ

不便さをチャンスに 辻利則さん(宮崎公立大学人文学部教授)

2015/10/23
宮崎公立大学人文学部教授 辻利則さん「不便さをチャンスに」

「福祉とIT」がキーワード


つじ・としのり 1993年、宮崎公立大学助手。講師、准教授を経て2008年から同大学教授。1999年宮崎大学大学院工学研究科博士後期課程修了。工学博士。専門は情報科学と災害情報。えびの市出身。

つじ・としのり 1993年、宮崎公立大学助手。講師、准教授を経て2008年から同大学教授。1999年宮崎大学大学院工学研究科博士後期課程修了。工学博士。専門は情報科学と災害情報。えびの市出身。

 6月に行政が持つ情報を経済活性化や少子化対策、観光振興といった地域課題の解決に活用する県の「オープンデータ利活用検討委員会」の委員長に就任した。7月からは産官学で設立した「みやざきインフラモニタリング研究会」の副会長。センサーを使い、老朽化した橋りょうや道路など社会インフラの損傷・劣化を効率的に監視する方法の研究を始めた。あらゆる機器をインターネットにつなぐ「モノのインターネット(IoT)」の一例だが、企業も行政もIT分野に多くの予算を投入している。

 一方、6年前からは宮崎県ボランティア協会の会長として障害者や独り暮らしの高齢者の地域活動をサポートしている。会員と小旅行したり、保育園などを訪ねて子どもたちに障害者への理解を深めてもらったり。障害者に接すると、彼らが日常生活で不便に感じていることは数多くあり、その解消は将来の超高齢化社会への備えになると感じる。障害者の生活の質を向上させながら、企業も利益を得る。そんな「宮崎発」のモデルをITで作れないだろうか。

 新しいビジネスの種は障害者が持っている。視覚、聴覚など彼らは健常者が知らない多くの苦労を体験している。ビジネスアイデアをゼロから探すのは大変だが、彼らに聞けば説得力のあるヒントが返ってくるはずだ。また介護の現場で働く人たちの作業軽減も期待したい。重い荷物を楽に持ち上げられる装着型ロボットの開発と発想は同じ。介護先の記録を1件ずつノートなどに記すのではなく、IT化で簡単に入力・保存できれば事務処理などの手間も減るだろう。人手不足の解消にもつながり、データ化で新たなサービスが生まれるかもしれない。

 ITではないが、不便さをチャンスにビジネスを好転させた事業所の例がある。宮崎市民文化ホールにある「カフェ・コリドール」は20人の精神障害者を雇用。当初はメニューを注文するスタイルだったが、接客などが十分にできず客からクレームを受けることがあった。そこでバイキング形式に転換。接客のほか、箸やスプーン、皿を並べる必要もなくした。食器や並べた料理の補充など新たな業務も増えたが、障害者の担当を一人一つ程度に細かく分け、集中して取り組めるようにした。

 コリドールは「接客が難しい」ところからバイキングという答えを導き、集客増につなげた。少子高齢化が進む本県で、今後障害者の生活の質を向上させるだけでなく、公共サービスを維持したり、若い人の社会参加を促したりするのはITを使わないと難しい。例えば無料の公衆無線LANサービス「WiFi(ワイファイ)」を県内全域で使えるようにすれば先の問題解消のほか、テレワーク(パソコンを使った在宅勤務)も普及し、観光客の増加も期待できる。福祉とIT。宮崎の将来を変えるヒントがそこにあると思う。

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