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設備投資と人手不足 眞嶋一郎さん(宮崎産業経営大学 経営学部教授)

2014/10/24
宮崎産業経営大学 経営学部教授 眞嶋一郎さん「設備投資と人手不足」

企業成長へ“順序”大事


 最近の産業界を取り巻く状況は二つ。景気回復と人手不足だ。 

宮崎産業経営大学 経営学部教授 眞嶋一郎さん
 10月3日付の宮崎日日新聞によると、みやぎん経済研究所の調査で県内企業の景況感が改善してきているとあった。卸売り、小売り、サービス業が好調で、やっと地方の宮崎にも景気の波が訪れてきたようだ。そんなときこそ気を付けたいのが、設備投資に対する判断だ。

 1980年代にトヨタ自動車副社長の大野耐一氏は「減量経営」から「限量経営」への転換を提唱した。減量経営とは景気が悪くなると企業が人、モノ(設備)、金といった経営資源をすぐに減らす手法。景気がよくなると大盤振る舞いで経営資源に投資する。限量経営は限られた量の経営資源で製品をつくって売り上げを伸ばしていく手法で、売り上げが伸びていないときも利益を追求する考え方だ。

 例えばバブル期に日産自動車は、高度な技術を使った高価な組み立てロボットを導入した。しかしバブル崩壊後、日産の工場ではそれらの設備が休眠状態だった。一方、トヨタ自動車は「人が基本、現場が基本」の姿勢で、徹底して人の力や知恵を生かすことに注力した。その結果は今や明らかだ。

 業績や景気が上向いてくると、経営者は投資に対する間違いを犯しやすくなる。特に製造業における設備投資は重要で、お金を投入する手順や順序を誤り、後に経営圧迫や倒産などの大きな失敗につながった例は無数にある。

 手順を間違えないためにはどうするか。第1は現場作業の改善や無駄を徹底的に省いて生産性の向上や原価軽減を図ることだ。それでも受注に対応できなければ、次に行うべきは工程や製造ラインのレイアウト変更。設備投資は最後の手段。この順番をぜひ守ってほしい。

 50年近く産業界を見てきて思うのだが、不景気なときに企業が合理化や効率化を進めてもなかなか成功しない。むしろ景気のいいときのうちに無駄を取り除くと、利益に跳ね返ってくるものだ。

 次に人手不足だが、人口は簡単に増えないし、移民や女性、高齢者を生かすのも容易ではない。では何をすべきか。これからの企業経営は、少ない優秀な人材をどう生かしていくかに尽きる。

 禅宗の教えの一つに「全機現(ぜんきげん)」という言葉がある。「全ての細胞、機能、技術、能力を発揮する」との意味だ。人が余っている時代は一部の優秀な人が組織を動かしていけば良かったが、ここまで人手不足が深刻になると一部のエリートだけではやっていけない。全員が機能を最大限に発揮できるような組織環境をつくる必要がある。

 政府の後押しもあり、今後は人件費が高騰する。その中で人を減らす、生かすということは利益に直結することを意味する。終身雇用の日本で企業が社員1人に払う生涯賃金は約3億円。これはかなりの額で、人を減らすということは経営政策の中でも重要。他社に勝つ競争力の向上をも意味する。

 ただ、人を減らしたり、異動させたりする場合によく間違いを起こす経営者がいる。異動では、職場で一番優秀とはいえない人を動かすことがある。私は間違いだと思う。実は一番優秀な人から異動させることが大事だ。

 理由は(1)優秀な人はどんな職場でも力を発揮できる(2)優秀な人が抜けたときこそ、残った組織にとって活性化のチャンス(3)企業には常に進化が必要で、優秀な人を集めて新商品開発や社の抱える難題解決に取り組ませることが会社の成長につながる-からだ。

 よく経営者が「人がいない」と嘆いているが、実は人を生かしきれていないのでは。人手不足で悩まず、2番手、3番手の人材を伸ばすマネジメントに取り組んでほしい。

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